今年度は小胞体に局在するC-末端アンカー型膜蛋白質であるミクロゾーム型アルデヒド脱 水素酵素(msALDH)の局在化機構をCOS細胞へのマイクロインジエクション系を用いて 調べ、以下の結果を得た。 1. 緑色蛍光蛋白質(GFP)およびGFPとmsALDHのC-末端35アミノ酸残基(膜貫通領域と 小胞体移行配列を含む)のキメラ(GFPALDH(35))をCOS細胞に発現させ、それら の細胞内局在を細胞分画法で調べた。その結果、GFPは細胞質画分にキメラはミクロ ゾーム膜画分に分布することがわかった。またCCDカメ4ラを用いて観察したところ、 野生型およびキメラは、それぞれ細胞質と小胞体に局在することが明らかになった。 2. 野生型およびキメラの組み換え蛋白質を調製した。それらををCOS細胞にマイクロイン ジェクションし、CCDカメラを用いて細胞内局在を調べると、インジエクション直後細 胞質に分布していたキメラは6時間後(37℃条件下)に小胞体に移行することが明らか になった。これに対してGFPは細胞質に留まったままであった。さらに、免疫電顕法を 用いてこれらの結果を確認した。 3. GFPALDH(35)の小胞体移行は37℃条件下では1時間以内に起こることが判明した。ま た、マイクロインジエクション後細胞を4℃に置くとGFPALDH(35)の小胞体移行は観察 されず、この反応は温度依存性であることがわかった。 4. ATP-γSとGTP-γSはGFPALDH(35)の小胞体移行を阻害した。 これらの結果より、GFPALDH(35)の小胞体移行反応はエネルギー依存性であることおよ びGTP結合蛋白質が関与することが示唆された。
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