本研究ではC-末端アンカー型膜蛋白質であるHPC-1/syntaxin 1A(HPC-1)の局在化機構をCOS細胞発現系を用いて調べ、以下の結果を得た。 1. 野生型HPC-1とC-末端疎水性領域の23アミノ酸残基を欠失させたHPC-1Δ266-288(Δ266-288)をCOS細胞に発現させた。細胞内局在を細胞分画法で調べたところ、野生型は膜画分にΔ266-288は可溶性画分に検出された。このことから、HPC-1のC-末端疎水性領域が膜挿入に関与することが確認された。また間接蛍光抗体法では、野生型およびΔ266-288はそれぞれゴルジ領域・細胞膜と細胞質に局在することが明らかになった。 2. HPC-1の膜トポロジーと細胞内輸送経路を調べるために、ウシ・オプシンの糖鎖付加配列を含む21アミノ酸残基をC-末端に融合したHPC-1/OP3を作製した。COS細胞に発現したキメラにはEndo H感受性の糖鎖が付加された。このことから、HPC-1の疎水性領域は膜を貫通していることが明らかになった。また、間接蛍光抗体法での結果と照らし合わせると、HPC-1はまず小胞体に挿入された後、分泌経路を経て細胞膜に到達することが示唆された。 3. HPC-1の小胞体膜移行配列を調べるため、HPC-1のC-末端33または24アミノ酸残基を大腸菌のマルトース結合蛋白質(MBP)のC-末端に融合したキメラを作製した。COS細胞に発現したMBPが細胞質に局在するのに対し、二種類のキメラは野生型HPC-1と同じくゴルジ領域と細胞膜に局在した。さらにオプシンの糖鎖付加配列を融合したMBP/HPC-1キメラもEndo H感受性の糖鎖が付加された。この結果は、小胞体膜移行および組み込みにはHPC-1のC-末端24アミノ酸残基で充分であることを示している。
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