研究概要 |
“C末端アンカー型膜蛋白質"のうち、ミクロソーム型アルデヒド脱水素酵素(msALDH)は小胞体に局在し、HPC-1(シンタキシン)は細胞膜に局在する。 本年度は、細胞膜に分布し小胞輸送に重要な“C末端アンカー型膜蛋白質"であるHPC-1の局在化機構についてCOS細胞発現系を用いて解析した。野生型HPC-1をCOS細胞に発現させた場合には、HPC-1はゴルジ体、および細胞膜に分布した。C末端の疎水的領域を欠損した異変HPC-1はサイトゾルに分布することから、C末端の疎水的領域が膜へのアンカーとして働いていることが示された。HPC-1のC末端側に糖鎖付加部位を持つキメラ蛋白質には糖鎖が付加され、それは細胞膜に分布した。以上の事実から、HPC-1は、まず小胞体膜に挿入されること、小胞体では、C末端側を小胞体内腔に、残りの部分をサイトゾルに向けた膜貫通構造を取ること、小胞体からゴルジ体を経由して細胞膜まで輸送されることが示された。 大腸菌マルトース結合蛋白質(MTP)のC末端にHPC-1のC末端疎水的領域24アミノ酸残基を持つキメラ蛋白質は、野生型HPC-1と同じ細胞内分布を示した。一方、MTPのC末端にmsALDHのC末端35アミノ酸残基を持つキメラ蛋白質は小胞体に局在した。従って、HPC-1,msALDHのC末端疎水的領域に各々、細胞膜、小胞体への局在化シグナルが存在すると考えられる。
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