GPI(Glycophosphatidylinositol)アンカー型の膜蛋白は小胞体で生合成直後にC末が切断され、小胞体ですでに生合成されたアンカー部分に移行し、形質膜へと移動する。小胞体でのアンカーの生合成はサイトゾル側で開始され、その後に位相の転換が起こるものとされる。この位相の転換に必要な要素として翻転酵素、フリッペースの存在とそのシグナルの存在が想定されている。後者のシグナルにGPIアンカーのイノシトール部分の脱アシル化が注目されていた。すなわちGPIアンカーの前駆の多くはそのイノシトールがアシル化されており、このためGPI特異的フォスフォライペースCに対して抵抗性であるが、GPIアンカー型の膜蛋白の蛋白は本酵素に対し感受性となっており、前駆体から成熟GPIアンカー型の膜蛋白への移行のいずれかの過程で脱アシル化が起こっているわけである。 今回、赤白血病細胞のK562細胞を利用し脱アシル化の起こるタイミングをGPI特異的フォスフォライペースCに対する感受性をもとに判定した。その結果、合成直後の蛋白はアシル化されているGPIアンカーの前駆体に移行することが明らかになった。形質膜上のGPIアンカー型蛋白のイノシトールの脱アシル化は蛋白移行後に細胞特異的、蛋白特異低になされることが示唆された。以上からGPIアンカーの前駆体の小胞体膜上での翻転にイノシトールの脱アシルイ化が関与していないことが明らかとなった。
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