細胞外マトリックス(ECM)の欠失が細胞増殖に及ぼす影響の解明 前年度に引き続き、ECMの欠失が細胞増殖に及ぼす影響を調べた。前年度の観察では、上皮細胞の分裂頻度に変化が見られないことを報告した。その後、実験に用いているキメラ系統が、作成後長期間を経過して元の野生系統と比べてECM欠失後の回復が有意に速いことがわかった。この性質は、ECM欠失が長期的に及ぼす影響を調べるのには不適切である。このため、あえて、キメラ系統を作成し直して実験をやり直すことにした。現在、再クローンを行っている。 細胞外マトリックス(ECM)の欠失が頭部再生に及ぼす影響の解明 前年度の実験から、頭部再生が、ECM欠失部域で相対的に起きやすいことを示す結果を得た。この結果から、ECMが頭部形成に影響する具体的機構として、(1)その欠失が遺伝子発現パターンを変化させ、頭部形成を活性化する可能性と、(2)ECMの欠失が構造的な障壁を取り除く要因となり、再生活性化につながる可能性、が考えられた。これらの可能性を調べるために、頭部再生を多様な条件下で行わせ、触手再生パターンを調べた。その結果、頭部再生力が最も強い頭部直下の組織では、ECM欠失部域以外の組織から再生が起きる場合があることが新たにわかった。この事実は決定的ではないが、(2)の可能性を支持すると考えられる。 細胞外マトリックス(ECM)の欠失が神経細胞分布に及ぼす影響の解明 神経細胞の走行パターンが、細胞が通常接着しているECMの欠失による影響を受けるがどうかは興味深い問題である。前年度は薬剤によりECMにダメージを与えることによる影響を調べた。本年度は、それに加えて欠失の影響を調べる実験を開始し、継続中である。
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