本年は、酵母の自食作用に必須な遺伝子との相同性から哺乳類自食作用に関与すると思われる蛋白質について解析を行い、以下のような成果を得た。1)LC3の解析:酵母の自食作用遺伝子産物Apg8pと相同性を持つ機能不明のラットLC3が、ラット肝から得た各種オルガネラ分画のうち、自食作用を担う膜構造・自食胞を含むオートリソソーム分画に特異的に局在していることを既に示しているが、さらに免疫電子顕微鏡法によりLC3の自食胞膜への結合を観察した。また、パルス・チェイス実験等から、LC3は合成後1〜2時間の間に半分ほどの分子が2〜3kDa低分子量のフォームに変化すること、高分子量LC3が細胞質に分布する一方で低分子量LC3のみが自食胞に結合すること、などを明らかにした。2)SKDlの解析:酵母の自食作用遺伝子産物Csclpと相同性が高シ)、機能不明のマウスSKDlについても解析を行った。優性阻害が期待される変異SKDl遺伝子を作成し、培養細胞に導入して発現させたところ、初期エンドソームの分布と形態に異常が生じ、そこからのトランスフェリン受容体の再循環などが阻害された。従って、SKDlは初期エンドソームの形態と輸送機能を制御しており、また自食作用にはそのようなエンドソーム機能が密接に関わっていることが示唆された。3)自食作用関連遺伝子破壊マウスの作成:酵母の自食作用遺伝子産物Apg5pと相同性の高いヒトhAPG5が、hAPG12と特異的に共有結合することを明らかにした。この結合は、酵母Apg5pとApg12pでも見られ、酵母自食作用に必須であることが判明している。hAPG5が自食作用に関与している可能性を、細胞、組織、個体レベルで検討するため、遺伝子破壊マウスの作成を行いつつある。マウスのホモログmAPG5のゲノムDNAのクローニングに成功した。
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