1. アフリカツメガエル初期胚の外胚葉と中胚葉の組み合わせ、あるいは外胚葉のみからなる外植体を利用し、孵化腺細胞の分化機構の解析を行った。対照胚が孵化期に達するまで外植体を培養し、抗UVS.2抗体で抗体染色を施し、孵化腺細胞が分化したか否かを確認した。種々の組み合わせ実験から以下の結論を得た。(1)ツメガエルの孵化腺細胞は、中胚葉からの誘導により予定頭部外胚葉から分化する。(2)陥入する中胚葉の先端部付近の細胞群が誘導能をもっている。(3)少なくとも後期嚢胚期まで誘導能を持ち続けている。(4)中期嚢胚期では、将来の頭部よりも背側後方に位置する外胚葉が自律分化能を持つが、何らかの抑制または、他の細胞への再分化が起き、正常発生ではこの領域から孵化腺細胞は分化しない。(5)後期嚢胚期では、予定頭部外胚葉の細胞が孵化腺細胞への自律分化能を持つ。 2. 輸卵管直部由来のプロテアーゼについては、ヒキガエルを材料に用い、オビダクチン蛋白質のN末端アミノ酸配列と、セリンプロテアーゼに特徴的なアミノ酸配列でデジェネレートプライマーを設定した。輸卵管直部のRNAをテンプレートとしてRT-PCR法により、両者に挟まれる領域を増幅し、クローニングした。得られたcDNA断片は、570塩基対の長さで、そこから予想されるアミノ酸配列は、アフリカツメガエル・オビダクチン蛋白質の一部分として登録されているアミノ酸配列と高い相同性を持つ(57%)ことが明らかになった。残念ながら現段階では、ヒキガエルオビダクチンの全長cDNAを得るには至らず、輸卵管直部のcDNAライブラリーを作製するにとどまっている。しかしcDNAの断片を得たことにより、全長のクローニングに見通しがついた。さらに、in vitroでホルモン刺激により、オビダクチン遺伝子の転写を誘導できることが明らかになった。
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