研究概要 |
シロイヌナズナ芽ばえ胚軸にオーキシンを片面塗布することによって人工的に屈曲反応を起こさせることができる。この反応を利用して胚軸が屈曲しない突然変異体msglを単離した。msglは屈光性欠損突然変異体nph40.粕cumandBriggs,1995)と同一であった。msg1の胚軸はオーキシン依存屈曲反応と屈光性のほかに屈地性も異常であり、胚軸の成長はオーキシン耐性を示した。msg1の外形は、葉が上偏成長や下偏成長を示すほかは野生型と違わなかった。以上の結果から、msglはオーキシン特異的屈曲異常突然変異体だと考えられる。成長異常を示す多くの突然変異体についてオーキシン依存屈曲反応を調べたが、axr1胚軸だけが屈曲異常を示した。axr1胚軸も屈地性と屈光性異常で、msg1同様オーキシン特異的屈曲異常突然変異体だった。オーキシン依存屈曲反応におけるMSGIとAXRIの関係を明らかにするために、両突然変異体の2重突然変異体を作成して、その表現型を調べた。msg1もaxr1もある程度屈光性を示すが、2重変異体は屈光性を完全に失った。2重変異体の屈地性の欠損はそれぞれの単一変異体の欠損よりも大きかった。axr1の葉はしわがよっているが、2重変異体の葉はしわがよると同時に上偏成長が起こっていた。すなわち、msg1とaxrlの両変異は相加的な効果を生じさせていたので、両遺伝子はほぼ独立にオーキシン特異的屈曲反応を支配していると結論できた。また、aux1突然変異体の根の屈地性異常に対するインドール-3-酢酸、2,4-D、1-ナフタレン酢酸の効果を調べたところ、ナフタレン酢酸だけが効果的に屈地性異常を回復させることを発見した。AUX1タンパクの一次構造(Bennett et al.,1996)を合わせ考えると、AUX1がオーキシン流入担体であることが結論できた。
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