本研究計画は3カ年の研究期間を見込んでおり、本年はその初年度にあたる。二次間充織細胞(SMC)の分離はウニ原腸胚をアクチナーゼE処理して原腸のみを単離し、これをプラスチック培養皿の上に1.5時間、室温で静置すると分離原腸先端からSMCが遊離してくる。この遊離細胞はプラスチック表面に他の組織細胞よりも強く接着する特性があることが分かったので、原腸培養液をピペッティングすることによって、遊離細胞のみをプラスチック表面に残すことが出来る。このようにして残ったSMCは低カルシウム人工海水洗浄によって回収できることが分かった。回収したSMCをBALB/cマウスに注入し、抗体生成を確認した後、定法によりP3U1ミエローマとのハイブリドーマを作成し、免疫組織化学によってスクリーニングを重ねた。その結果、SMCの表面を特異的に認識する8C12モノクローン抗体を分離した。免疫組織化学では8C12モノクローン抗体はSMCが原腸先端から分離してくるときにこの細胞の基底面にのみ現れ、移入が完了した後も数時間細胞表面全域に存在する。しかし、プリズム幼生期に入ると、SMC表面には検出されなくなる。イムノブロットでは、この抗原は未受精卵から桑実胚前までは検出されず、桑実胚になって弱く検出される。その後間充織胞胚期から原腸胚期には強く発現し、その後プリズム期までは暫減する。8C12抗体を用いた免疫沈降を行い、還元及び非還元条件下で20%SDS-PAGEゲルで抗原を解析した。その結果、相対分子量34kDaの、特に際だった量のシステイン残基を持たない、単ポリペプチド鎖構造の蛋白であることがわかった。現在本研究計画2年度に向けて遺伝子分離を行うためのポリクローン抗体作成準備を開始している。これまでの結果の一部は平成10年5月28日から熊本大学で始まる第31回日本発生生物学会において発表する予定である。
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