脊椎動物の体軸形成には、オ-ガナイザー(マウスではノードと呼ぶ)が重要な働きをしている。オ-ガナイザーはアクチビンやnodalなどのTGF-βファミリーの中胚葉誘導シグナルがSmad2を介して一群のオ-ガナイザー特異的転写因子の発現を誘導することにより形成される。本研究ではその分子機構について、ノード形成に必須な転写因子HNF-3βの発現制御機構の解析によりアプローチしている。本年度はこれまでに同定されているマウスHNF-3βのノード・脊索エンハンサーより、その活性に重要な配列を異種間でのエンハンサーの塩基配列の比較により同定する事を行った。 マウスのエンハンサーと塩基配列を比較する相手として、魚(ドワ-フグ-ラミ-)を選んだ。魚HNF-3βの転写単位周辺のDNA断片について、laczをレポーターとしたトランスジェニックマウス胚を作成する事によりエンハンサー解析を行った結果、-8kbから-5.5kbの範囲にノード特異的なエンハンサーが同定された。このエンハンサーによる遺伝子発現様式は、中胚葉誘導シグナル分子nodalの発現とよく対応しており、そのエンハンサー内にnodal応答配列が含まれることが期待される。その塩基配列を決定してマウスのエンハンサーと比較したところ、共通な配列(CS1、17bp)が見いだされた。さらに、エンハンサーに欠失変異を導入することにより、このCS1がエンハンサー活性に重要な働きをしていることがわかった。今後は、CS1がSmad2を介して中胚葉誘導シグナルの応答配列になっているかどうかを検討する予定である。
|