我々はウニのアリールスルファターゼ(Ars)遺伝子上流に、約600塩基対のインスレーターが存在することを発見し、機能解析を行ってきた。本研究により、Ars遺伝子インスレーターは、1:方向依存的にエンハンサー機能を遮断すること、2:Arsインスレーターはショウジョウバエにおいてもエンハンサー遮断機能を示し、同様に方向性があることが明らかになった。Ars遺伝子上流のインスレーターは、隣接する遺伝子に対するArs遺伝子の影響を遮断する働きがあると予想される。外来遺伝子を染色体DNAに挿入すると、挿入位置依存的に発現が抑制されるが、3:ヒト培養HeLa細胞を用い、インスレーターで挟んだネオマイシン耐性遺伝子と挟まなかったネオマイシン耐性遺伝子を染色体DNAに導入し、安定的ネオマイシン耐性獲得効率(コロニー形成率)を指標に、Arsインスレーターの挿入位置依存的発現抑制を遮断する効果を測定しところ、Arsインスレーターを結合した場合にはコロニー形成率が顕著に増加することが示された。これらの結果は、Arsインスレーターの挿入位置依存的発現抑制に対する抑制効果を示唆しており、インスレーター機能は種を越えて保存されていることが示された。また、Arsインスレーターには、4:核マトリクス結合活性があり、5:2種類の核タンパク質が結合することが示された。核タンパク質結合サイトの1つはGの連続配列(Gストリング)であり、Gストリングに結合する因子をサウスウェスタン法によりクローニングしたところ、6:GSBPは約270kDタンパク質をコードし、塩基性・酸性アミノ酸を約50%も含む新規のタンパク質であることが示された。7:GSBP内には、サイクリン依存性キナーゼの標的配列、Destructionボックス、PEST配列があり、細胞周期に伴って分解される構造であること、8:GSBPはG1期の核に存在し、M期に出現し、S期の開始とともに消失することが示され、インスレーター機能は核構造と深く関わっていることが示唆された。
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