我々は受精の分子機構をアフリカツメガエルなどの両生類を脊椎動物のモデル動物に用いて解析し、インテグリンのリガンドであるRGD(Arg-Gly-Asp)配列をもつペプチド:RGDSがツメガエル卵を付活することを発見した。これらの結果はRGD配列をリガンドとする精子アゴニストが正常受精時に作用していること、また、卵付活に関わるリセプター分子が卵細胞膜上に存在することを強く示唆しており、卵付活に関わる精子アゴニストとそれに結合する卵リセプター分子の検索と付活の分子機構を明らかにすることが可能となった。本研究では卵付活に関わる卵細胞膜上の卵リセプター分子とRGD配列をリガンドする精子アゴニスト分子を検索し、受精初期の分子機構を明らかにすることを主な目的とした。 (1)RGDSペプチドに対する卵リセプター分子をRGDS結合カラムと各種クロマトグラフィーを用いて精製した。また、In vivoでのこれらの分子の相互作用を明らかにするため、予めラベルされた二価性架橋剤を結合したRGDSペプチドを用いて卵リセプターにラベルを導入してその分子の部分的性質を明らかにした。 (2)受精初期に精子がどのようにして卵内Caイオン濃度の上昇を誘起するかに関して、RGDSによる付活のシグナル伝達の経路を各種の伝達阻害剤を用いて明らかにし、Srcファイリーのタンパク質チロシンキナーゼがRGDおよび精子による付活過程の関与することを明らかにした。 (3)精子アゴニストの候補である先体プロテアーゼとの関係を高度に精製し、その分子的性質を明らかにし、RGDペプチドの機能との関係を検索した。 (4)さらに、有尾両生類(イモリ)における卵付活の分子機構を検討し、RGDペプチドおよび精子プロテアーゼと精子細胞質中の卵付活との関連を検討した。
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