新しく見出した副腎と生殖腺の共通原基の分化を制御する因子の研究

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09680730
• 研究機関: 奈良県立医科大学
• 研究代表者: 秦野 修 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (40164850)
• キーワード: Ad4BP / SF-1 / Pref-1 / ZOG / WT1 / 副腎皮質 / 生殖腺 / 副腎皮質-生殖腺原基 / 発生分化 / 形態形成

研究概要

筆者は、転写因子Ad4BP/SF-1の発現解析より副腎皮質原基と生殖腺原基が共に由来する共通原基(副腎皮質-生殖腺原基Adreno-genital primordiumと命名)を見い出した。本研究は、この共通原基の分化に関与する制御因子の探索とその性質の解明を目的として以下のことを明らかにした。
1、副腎皮質-生殖腺原基の分化に関与する候補分子の一つとしてPref-1(別名ZOG)を見い出した。これはもともとは副腎皮質の球状層に特異的な因子としてクローン化されたが、発生過程における発現を調べることによって、副腎皮質-生殖腺原基に既に広く発現していること、及びその分化過程で副腎皮質原基にのみ発現が継続するが、生殖腺原基においては発現が止まることを明らかにした。
2、このPref-1の遺伝子上流のプロモーター領域を単離、構造解析を行ない、-70〜-56領域にWT1(生殖腺形成に必須の転写因子)の結合配列が2個存在することを見い出した。そこでPref-1の転写がWT1によって抑制されることをPref-1プロモーターをもつレポータープラスミドとWT1発現プラスミドを用いたプロモーターアッセイによって見い出した。又、-70〜-56領域に塩基置換を導入したPref-1プロモーターにおいては、WT1による転写抑制がおこらなかった。
3、WT1の発現は副腎皮質-生殖腺原基において一様でなく生殖腺側でのみ発現していることを見い出した。これらの結果から、WT1がPref-1遺伝子プロモーターの-70〜-56領域に結合して、生殖腺側におけるPref-1の発現を抑制することが、副腎皮質-生殖腺原基の生殖腺への分化に必要であることが示唆された。

研究成果

• [文献書誌] Sato,K.,et al.: "Evidence for the involvment of a src-related tyrosine kinase in Xenopus egg activation"Dev.Biol.. 209. 308-320 (1999)
• [文献書誌] Harada N.,Honda S.& Hatano O.: "Aromatase inhibitors and enzyme stability"Endocrine-Related Cancer. 6. 211-218 (1999)
• [文献書誌] Hatano O.,et al.: "Genesis of the Adrenal Cortex and Gonads from Their Common Primordium"Molecular Steroidogenesis(Frontier Science Series No.29) Universal Academy Press Inc.(Tokyo). 29. 197-200 (2000)
• [文献書誌] Takemori H.,et al.: "Characterization of Proximal Element in The Rat Pref-1(ZOG) Gene Promoter"Molecular Steroidogenesis(Frontier Science Series No.29) Universal Academy Press Inc.(Tokyo). 29. 209-212 (2000)
• [文献書誌] Harada N.,et al: "Histological Lesions in Aromatase-Deficient Mice"Molecular Steroidogenesis(Frontier Science Series No.29) Universal Academy Press Inc.(Tokyo). 29. 133-136 (2000)