一次求心性線維の脊髄への投射路形成における転写因子DRG-11の役割を解析する第一歩として、ニワトリDRG-11をクローニングした。その結果、ラットDRG-11と比較してopen reading frameのアミノ酸配列が約90%で相同であった。さらに、ホメオドメインは約98%で相同であり、哺乳類と鳥類の間でDRG-11のアミノ酸配列が高度に保存されていることが明らかになった。 次に、ニワトリ胚脊髄神経節および脊髄におけるDRG-11の発現様式をin situ hybridization法によって調べた。DRG-11は孵卵5日の脊髄神経節で弱い発現が見られた。一次求心性線維が脊髄灰白質に進入する孵卵8日になると、脊髄神経節に加えて脊髄後角表層部でDRG-11の発現が認められるようになった。一方、交感神経節での発現は見られなかった。このような脊髄神経節および脊髄後角表層部でDRG-11の発現は孵卵20日でも維持されていた。また、孵卵10日胚の脊髄神経節細胞を1日間分散培養し、in situ hybridizationを行ったところ、DRG-11の発現は神経細胞に限局し、非神経細胞での発現は認められなかった。 以上のように、一次求心性線維が投射する時期に、脊髄後角表層部に限局してDRG-11の発現が認められたことは、この転写因子が一次求心性線維の脊髄後角への投射路形成に関与する可能性が示唆された。
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