一次求心性線維の脊髄への投射路形成における転写因子DRG-11の役割を解析する第一歩として、これまでにニワトリDRG-11をクローニングした。本年度はcRNAを用いたin situ hybridization法によって、孵卵3-20日のニワトリ胚脊髄神経節および脊髄におけるDRG-11の発現様式を詳細に検討した。DRG-11mRNAは孵卵4日の脊髄神経節で弱いながら発現が見られるようになった。一方、脊髄や交感神経節では発現は認められなかった。その後、脊髄神経節におけるDRG-11の発現は強まった。特異抗体を用いた免疫組織化学を隣接切片で行うことによって、DRG-11はTrkA陽性およひTrkC陽性の脊髄神経節細胞の両方に発現することが明かになった。一次求心性線維が脊髄灰白質に侵入する孵卵6.5日になると脊髄でもDRG-11の発現が認められるようになった。脊髄における発現は後角に限局し、特に表層部(I、II層)で強い発現が見られた。さらに、脳室層(上衣層)に面した領域で中程度の発現が見られたが、孵卵10日以後、この領域での発現は消失した。このような脊髄神経節および脊髄後角表層部でDRG-11の発現は孵卵20日でも維持されていた。 以上のように、一次求心性線維が投射する時期に、脊髄後角表層部に限局しDRG-11の発現が認められたことは、この転写因子が一次求心性線維の脊髄後角への投射路形成に関与する可能性が示唆された。
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