研究概要 |
近年の分子生物学的解析から個々の嗅細胞は単一の匂い分子レセプターのみを発現し、同じタイプの嗅細胞が特定の嗅球糸球体に収束して投射することが明らかとなり、嗅球糸球体が匂い伝達における機能的基本単位であることが証明された。我々は、基本単位である糸球体のニューロン、シナプスの構成の解析を進め、従来,嗅球の基本構造とシナプス結合は非常に簡単に考えられてきたが、共焦点レーザー走査顕微鏡を用いた免疫細胞化学法を中心とした形態学的解析から、嗅球糸球体層の介在ニューロンは多様なグループからなることが判明した。嗅球糸球体層の介在ニューロンは細胞体の化学的性質によりGABA陽性、カルレチニン(CR)陽性,およびカルビンヂン(CB)陽性の3つのグループに分れた。それぞれは全体の細胞の20%、20%、10%であった。 本年度は特に、これらの嗅球糸球体層の介在ニューロンにおける化学的性質を基にした関係がラット特有のものかどうか検討するために、マウス、ハムスター、すなねずみ、モルモットの嗅球を同様な方法で形態学的に解析した。その結果、GABA陽性、カルレチニン(CR)陽性,およびカルビンヂン(CB)陽性の3つのグループは独立した関係にあり、検査したすべての齧歯類で同一であった。 この結果より、ラットで我々が発見したシナプス伝達レベルでの多様性も予想される。このような解析から、齧歯類の嗅球糸球体内では、従来考えられていたよりはるかに複雑な情報処理が行われていると考えられる。
|