培養下においてマウス後根神経節(DRG)細胞は、短期間で偽単極の形態を示す。成熟マウスDRG細胞の場合、偽単極細胞は突起の分枝部にglomerulus様またはswelling状の構造がみられ、分岐部から細い多数の突起を出しているもの(pseudouniplar cell type2)が観察される。しかし、胎仔・新生仔DRG細胞にはこのような細胞は出現しなかった。標識色素細胞内注入法、電子顕微鏡の観察にて、glomerulus状の構造は神経突起の一部であることが確かめられた。神経栄養因子(Neurotrophic factors :NTF)は胎生期および新生期に神経細胞の分化・生存、神経突起の伸長などに働く。成熟動物の神経細胞に対するNTFの依存性は損傷時の神経突起修復に働き、培養下においても成熟後根神経節(DRG)細胞はNTFの添加がなくても神経突起の伸長が起こり、細胞の生存・突起伸長には影響がなかったが、神経突起の分校の数にNTFが関与する報告もあり、NTFが成熟神経細胞の突起形成時になんらかの影響を与えている可能性が高いと考えられる。 pseudounipolar cell type2の細胞は神経成長因子(NGF)を添加するとその出現頻度は増加するが(20%)、他の神経栄養因子(NTF)にはその傾向はみられない。また、DRG細胞の生存にはNTFは影響を与えない。また、anti-NGFおよびanti-p75(NGF receptor)を添加すると、type2の出現頻度の減少が認められた。以上のことから、神経栄養因子(NTF)は胎生期のDRG細胞の生存や神経突起の伸長に働くが、成熟動物におけるDRGではNGFにのみ突起形成への影響がみられた。glomerulsu様、swelling状の構造を持ち突起分技部から多数の突起を出す現象を起こし、NGF receptor (p75)をブロックすることにより、抑制されたことから、これらの構造や多数の細い神経突起の伸長はNGFによって引き起こされ、NGF receptorが発現していることを示唆している。
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