フリーズフラクチャー法によりアストロサイトが血管壁基底膜、軟膜下基底膜と接するアストロサイト終足の細胞膜内に小型で四角配列したassemblyと言われる構造物が大量に局在していることが知られていた。最近このタンパクの本体が水チャンネルの1つであるアクアポリン4(AQP4)であることが分かってきた。アストロサイトは細胞同士がギャプジャンクションで連絡しており脳内でネットワークを形成しており、アストロサイトが血管や軟膜の基底膜に伸ばした終足や上衣細胞にAQP4が局在していることからアストロサイトを介した水の流れが存在すると推察される。このようにAQP4は脳内での水の流れの調節に非常に重要な役割をしていると考えられるが、その発現の制御機構については全く分かつていなかった。そこで我々はAQP4のcDNAをRT-PCR法でクローニングし、その発現量の変化をRT-PCR-Southern法で調べた。アストロサイトをプロテインキナーゼC(PKC)の活性化剤であるホルボールエステル(TPA)で刺激し、経時的にAQP4mRNA発現量を調べた。AQP4mRNAは恒常的にアストロサイトに発現していたが、TPA処理により急速にその発現量が低下する事を発見した。この低下はPKC阻害剤であるH7の前処理、またはPKCをダウンレギュレートさせる前処理で阻害されることから、AQP4のmRNAの発現がホルボールエステル感受性のPKCによって抑制されると考えられた。さらに、PKC活性化によるAQP4mRNAの低下はタンパク質合成阻害剤であるシクロヘキシミドやmRNA合成阻害剤であるアクチノマイシンD処理による影響を受けないこともわかった。つまり、PKC活性化によるアクアポリン4mRNAの低下のメカニズムはタンパク合成を介さない転写レベルでの阻害であろうと結論づけた。今後はPKC分子種の特定を行う予定である。
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