研究概要 |
神経細胞の軸索では微小管のレールに沿って種々の膜小器官が運ばれている。細胞体からシナプス方向への輸送には、キネシンスーパーファミリー蛋白(KIF)のKIF1A,KIF1B,KIF2,KIF3A/B,KIF4,KIF5がモーターとして働いている。KIF1Aはシナプス小胞の前駆体、KIF1Bはミトコンドリアの輸送に関わっていると考えられ、他の各KIFもそれぞれ特異的な膜小器官の輸送に関わっている可能性が高く示唆されている。それぞれのKIFが特異的な膜小器官を輸送する為には、各KIFとtargetの膜小器官の間に互いを特異的に認識する機構が存在することが必要である。その機構を解明することは、軸索輸送の機構を明らかにするのに重要であると思われる。キネシンは、N末のglobularなdomainで微小管と結合し、軽鎖の結合するC末部で膜小器官に結合する。KIFと膜小器官が互いを特異的に認識する機構としては、各膜小器官には各KIFを特異的に認識する膜蛋白の存在する可能性が高い。キネシン(KIF5)の結合蛋白の1つとして、アフィニィティカラムを用い、ER上に存在するキネクチンが同定されたが、その後の研究では必ずしもキネシンと標的膜小器官との相互作用の特異性を担う蛋白ではない可能性が高くなってきている。我々は、昨年度、KIF1〜KIF4の膜小器官上の結合蛋白を、rabphilinの同定・精製で成功しているchemical crosslinkerによる方法で、ラットの馬尾microsome分画を用い、KIFと結合蛋白のcomplexとして検出した。本年度は、結合蛋白の単離と精製を進める為に、KIF3A/Bを選択し、その結合蛋白について、今後の精製に利点があると思われるPC12培養細胞を用いた系を検討し、その結果、いくつかの候補となる蛋白を同定した。現在、それらの蛋白について、アミノ酸配列の決定に必要な量の精製法を検討中である。
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