研究概要 |
平成10年度の研究実績:昨年度に引き続き、P19(テラトカルシノーマ)を実験材料に取り上げた。レチノイン酸で処理した凝集塊細胞と神経分化細胞でb-シリーズのガングリオシドの分子種を検索し、ガングリオシド合成酵素活性と合成酵素遺伝子の発現レベルが高いことを報告した。また、シナプス形成の特異マーカーである抗GQlb抗体の染色では、未分化細胞から神経分化細胞まで染色され、神経分化細胞の神経突起や軸索が染色されたが、抗GQlb抗体の染色では、神経分化細胞のみに染色されたのが特徴的であった。 一方、シナプス形成の特異マーカーであるGAP-43分子とシナプトフィシン分子の局在を神経分化細胞で調べた。大量に培養した神経分化細胞から、ショ糖密度勾配法によりgrowth coneとシナプトソームの画分を調製した。growth cone画分の純度は抗GAP-43抗体で、シナプトソーム画分の純度は抗シナプトフィシン抗体を用いて、ウェスタン・ブロット法で確認した。また、神経細胞分化マーカーであるN-CAM分子の存在もウェスタン・ブロット法で確認出来た。細胞の固定法と免疫染色について詳細に検討した。神経細胞の固定剤として、ポリ-L-リジン、ポリエチレンイミン、ラミニン、マトリゲルで比較した。マトリゲルが最適であった。免疫染色の共焦点顕微鏡写真がら、抗GQlb抗体の染色では、神経分化細胞の軸索のgrowth coneで強く染色され、GAP-43抗体の染色像と酷似していた。抗GTlb抗体の染色では、抗シナプトフィシン抗体のシナブスの染色像と酷似していた結果を得た。抗GTlb抗体、抗GQlb抗体と抗GAP-43抗体、抗シナプトフィシン抗体の組み合わせで二重染色を行い、各々の相互の分子の局在を比較検討した。以上の結果は第41回日本神経化学会大会、平成10年9月21日、東京で発表した。なお、Neurochemical Rescarch,24,p175(1999)に掲載した。
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