研究概要 |
中枢シナプス伝達に関与するCaチャネルのサブタイプを同定し、G蛋白質を介した伝達修飾のメカニズムを研究することを目的として、2〜3週齢ラット皮質視覚野よりスライス標本を作製し、ノマルスキー顕微鏡下に錐体細胞からwhole-cell patch clamp記録を行い、他の錐体細胞を直接電気刺激して得られるグルタミン酸を伝達物質としたEPSC(興奮性シナプス後電流)及び介在ニューロン刺激により誘発されるIPSC(抑制性シナプス後電流)を記録した。EPSCはN型チャネルに特異性のあるω-conotoxin GVIAの30nM〜1μM、P/Q型チャネルに特異性のあるω-agatoxin IVAの0.3〜3μMで濃度依存的に各々最大50%程度の抑制を受けた。またIPSCはω-agatoxin IVAの30nM〜1μMで最大70%程度の抑制を受けたが、ω-conotoxin GVIAでは1μMまでは濃度依存的な抑制は確認されなかった。一方刺激-記録が同一のニューロンペア-間のEPSCがcarbachol,noradrenaline,serotonin(いずれも30μM)の各々でシナプス前性に抑制されたことから、シナプス前の神経終末においてこれら複数のアミンに対する特異的レセプターが共存し、それらの活性化がグルタミン酸放出抑制に至る伝達修飾機構のいずれかの段階に収束していることが示唆された。今後は皮質のスライス培養標本を用い遺伝子の導入または発現抑制処置を施した上で同様の電気生理学的検討を行い、関与するG蛋白質、Caチャネルのサブタイプの同定とカスケードの解明を継続する。
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