シナーフィン(synaphin)は伝達物質放出機構の中心的役割をはたしている融合複合体に結合する細胞質蛋白質である。この蛋白質の伝達物質放出における役割を明らかにするため、今年度はシナーフィンおよびSNAP受容体(SNAREs)蛋白質を大腸菌で作製し、それらの間の試験管内での相互作用を解析し、以下の結果を得た。 (1) シナーフィンはそれ自身ではシンタキシンにほとんど結合しない。結合には少なくともμM以上の濃度のシナーフィンが必要である。 (2) VAMP-2とシナーフィンはお互いのシンタキシンへの結合を強め合う。しかし、SNAP-25にはこの作用がない。 (3) VAMP-2とSNAP-25が同時に存在する時、シナーフィンのシンタキシンへの結合は最大となる。 (4) α-およびβ-SNAPはVAMP-2およびSNAP-25存在下でのシナーフィンのシンタキシンへの結合を阻害する。 (5) シナーフィンはシンタキシン分子の膜貫通部位近傍のH3ドメインに結合する。 (6) シナーフィン分子の中央部分が主としてシンタキシンへの結合に関与する。 これらの結果はシナーフィンが7S複合体に最もよく結合すること、特にVAMP-2の結合によってもたらされるシンタキシンの立体構造の変化がシナーフィンの作用において重要であることを示唆する。また、α-SNAP、シナーフィンがともに伝達物質放出機構において重要であることから、両者は放出機構の異なったステップで独立に作用していると考えられる。
|