ラット胎児脳に特異的に発現するタンパク質を我々が独自に開発したタンパク質マップ法により検出した後、これらを単離してアミノ酸配列分析を行うことにより1つ1つのタンパク質を同定した。これらの中には既に胎生期に優位に発現することが報告されているものも多かったが、いくつかの興味深いタンパク質も含まれていた。この中で、低分子量Gタンパク質の制御因子の一種と考えられる分子量30kDaのタンパク質、およびputative HLA-DR associated proteins PHAPIおよびPHAPIIのラットホモローグについてマウス胎児cDNAライブラリーからPCR法によるクローニングを行った。分子量30kDaの未知タンパク質についてはアミノ酸配列が決定できた領域がRhoGDIと非常に相同性が高かったため、作製したオリゴヌクレオチドブライマーの特異性が低く、現在のところクローニングに成功していない。一方、PHAPIおよびPHAPIIについてはマウスcDNAおよびgenomic DNAについてクローニングを完了した。これらの過程でPHAPIおよPHAPIIはいずれも単一のタンパク質ではなく、多くのisotypeを有することが明になった。PHAPIについては非常に相同性の高い2つの遺伝子が存在していた。これらのisotypeは2つの遺伝子から選択的スブライシングによって生じるらしいことが明かとなってきた。また、これらのタンパク質の生理機能を明らかにするため細胞内の標的タンパク質を探索する過程で、PHAPIをリン酸化する未知プロテインキナーゼを見出した。
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