研究概要 |
これまで哺乳類における遊離型およびタンパク質中のアミノ酸は、すべてL-体から構成されていると考えられてきた。しかし最近、哺乳類組織中に遊離型D-アスパラギン酸とD-セリンが存在することが明らかとなり、哺乳類においてもD-アミノ酸が機能している可能性がでてきた。そこで、本研究ではD-アミノ酸前駆物質と考えられる物質を脳室内投与あるいは灌流液中に投与することによって、脳内D-アミノ酸含量が変化するかを検討した。D,L-アミノ酸の分析は、アミノ酸抽出液をOPAとBoc-L-Cysteineで誘導化した後、HPLC-蛍光法によって行った。 Serine hydroxymethyl transferaseによってグリシンからL-セリンを生成する過程でD-セリンも生成する可能性と、まだ哺乳類では見つかっていないRacemaseによってD-セリンが生成する可能性があることから、まず前駆物質としてグリシンとL-セリンの投与を行った。グリシンあるいはL-セリンの脳室内投与16時間後及び24時間後において、脳部位によってはD-セリン含量(大脳皮質、海馬、線条体など)が増加する傾向がみられたが、有意ではなかった(現在、用量、投与後時間依存性を検討中)。また、脳内透析法を用いて灌流液中にグリシンあるいはL-セリンを投与したところ、投与後12時間までの間に線条体D-セリン含量に変化はみられなかった。(現在、マイクロインジェクションニードル付き透析プローブを用いて、透析膜近傍にアミノ酸注入後の脳内透析法を検討中)。以上のようにD-アミノ酸生合成に関わる酵素活性はかなり低いことが予想され、連続脳室内投与あるいはミニポンプなどによる連続投与も検討中である。
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