研究概要 |
これまで哺乳類における遊離型およびタンパク質中のアミノ酸は、すべてL-体から構成されていると考えられてきた。しかし最近、哺乳類組織中に遊離型D-アスパラギン酸とD-セリンが存在することが明らかとなり、哺乳類においてもD-アミノ酸が機能している可能性がでてきた。そこで、本研究ではD-アミノ酸前駆物質と考えられるL-セリンを血液脳関門が完成していない1週令ラットの腹腔内あるいは8週令ラットの脳室内に投与することによって、D-セリン酸含量が変化するかを検討した。D,L-アミノ酸の分析は、アミノ酸抽出液をOPAとBoc-L-Cysteineで誘導化した後、HPLC-蛍光法によって行った。 1週令のラットにL-セリンを腹腔内投与し、6時間後の各組織でのD-セリン含量を測定したところ、大脳皮質・間脳・中脳・橋-延髄・小脳などでコントロールと比較してそれぞれ2.4・1.8・1.7・1.8・2.1倍にD-セリン含量が増加した。さらに、肝臓・腎臓などの組織においてもそれぞれ3.7・5.3倍に増加していた。また、8週令のラットにL-セリンを脳室内投与し、2時間後の各脳部位でのD-セリン含量を測定したところ、線条体・海馬・間脳・中脳・橋-延髄・小脳などでD-セリン含量が有意に増加した。以上の結果から、D-セリンは哺乳類組織中で生合成されており、その前駆物質はL-セリンである可能性が示唆された
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