本年度は以下のように主に解析システムの確立をおこなった。 1.株化ミクログリアへの遺伝子導入:ミクログリア機能遺伝子のうち種々の機能にかかわる事が示唆されているTNF受容体遺伝子をPCR法によりクローニングした。えられた遺伝子を発現ベクターに組み込み株化ミクログリアへ導入して安定発現株を選択している。 2.脳切片での解析系:大脳皮質および海馬切片を作製して株化ミクログリアを導入しacuteおよび培養下での形態変化、神経細胞死、膜電位変化に対する影響を調べ、共培養下のミクログリアの動態が解析できることがわかった。 3.胎児脳への遺伝子導入:ラット脳への末梢動脈経由のミクログリア移入システムは既に確立してある。神経回路形成以前からプロテアーゼインヒビターやサイトカインのアンタゴニスト、NOSなどのミクログリア機能遺伝子を発現するミクログリアを導入して、回路形成過程を含んだLTP形成におけるミクログリアのプロテアーゼやサイトカイン、NOSなどの作用を調べるために、妊娠12日から20日の胎児に経子宮的に遺伝子導入したミクログリアを注入して出生させ、注入細胞が脳で見られるかどうかを調べたところ。3週齢の動物脳においても標識された細胞が確認できた。 4.生体脳への遺伝子導入:transient transfectionで導入したlacZ遺伝子を発現するミクログリアをマウス尾静脈に注入したところ導入遺伝子は脳に特異的に導入できることがわかった。transient transfectionでは導入後3週間で導入直後の発現量の約1/3程度保持されていることがわかった。
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