研究概要 |
我々は数年来、エレクトロスプレー質量分析計を用いたLC/MS法を開発し、脳特異的リン酸化蛋白質の生体内での(in vivo)のリン酸化の解析を行っている。本研究では伝達物質放出の制御に重要な役割を果たしているシナプシンI、MARCKS、及び神経突起の伸長、シナプス形成に重要な役割を果たしていると思われるGAP-43、MAP1Bなどに注目し、それらのプロリン指向性キナーゼ、Cキナーゼによるリン酸化の果たす役割、種々のキナーゼ間の相互作用を明らかにすることを目的としている.2年度にわたり、イオン源の微小化による高感度化や、リン酸基特異的検出法の検討を行い、微量試料(ピコモルからフェムトモル)を用いて生体内でのリン酸化部位を詳細に解析するアッセイ系を確立した。これを用いて脳特異的リン酸化タンパク質を解析した。その結果多くのタンパク質でプロリンの直前のセリン、スレオニンがリン酸化されていることが明らかとなった。このことから、MAPキナーゼやCdk5キナーゼなど、脳に大量に発現しているいわゆるプロリン指向性キナーゼが、これらの蛋白質をリン酸化し、そのリン酸化が伝達物質の放出の制御、シナプス形成に必須であると考えられる.単離したMAP1BをMAPキナーゼによりMAPキナーゼによりリン酸化すると、微小管から解離することが見いだされ、また、MAPキナーゼがMAP1Bの微小管結合部位の近傍をリン酸化することが分かった。これらの結果から、MAPキナーゼによるMAP1Bのリン酸化は,MAP1Bの機能調節に重要な役割を果たしていることが明らかになった。
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