ノルアドレナリンシナプスでは、神経伝達物質であるノルアドレナリン(NA)が放出され、受容体に結合し、情報伝達を行う一方で、ノルアドレナリントランスポーター(NAT)によってNAが再吸収され神経伝達が終了する。中枢神経系作用薬の作用部位としてNATを想定し、中枢神経症状の発症と関連の深い向神経・精神病薬あるいはインターフェロン(IFN)などによる、NATの活性調節機構について薬理学的に解析することを試みた。そこでNATによるNA再吸収機構を存在する培養ウシ副腎髄質細胞を用い、NATのNA輸送に対するIFNの影響について検討した。 IFN-αで副腎髄質細胞を長期処理すると、時間(4〜48時間)と濃度(300〜1000U/ml)に依存して細胞への[^3H]NAの取り込みが抑制された。この抑制作用はIFN-βでも認められたが、IFN-γでは認められなかった。IFN-αによる取り込み抑制作用はIFN-α抗体によって減弱された。NA取り込み機能におけるIFN-αの抑制はEadie-Hofsteeプロットによる解析から最大取り込み能の減少によるものであり、Michaelis定数の変化によるものではないことが示された。さらにIFN-αで処理した細胞より調整した細胞膜への[^3H]デジプラミンの結合実験で、Scatchardプロットによる解析から最大結合の減少が認められ、解離定数には変化が認められなかった。このことからIFN-αによるNA取り込みの阻害は、NATの細胞膜上の数の減少によるものであることが明らかになった。またIFN-αは副腎髄質細胞においてプロテインキナーゼC(PKC)の顕著な活性化を引き起こした。トランスポーターの機能調節においてPKCの関与が他の細胞において報告されているが、PKCを不活性化した細胞において、IFN-αによる取り込み抑制作用は減弱されたので、IFN-αによる抑制作用は少なくともPKCを介した作用であることが示唆された。 このNAT減少の機序に関しては、(1)遺伝子発現の抑制、(2)mRNAの安定性の低下、(3)トランスポーターの蛋白輸送系の阻害、(4)トランスポーター蛋白のインターナリゼーションやデグラデーションの促進等の可能性が考えられるので、mRNAの定量やアフリカツメガエル卵母細胞並びにホ乳類由来の培養細胞にクローン化NATを発現させ、NAT抑制におけるIFN-αの作用機序について分子生物学的に検討したいと考えている。
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