研究課題/領域番号 |
09680780
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | (財)東京都精神医学総合研究所 |
研究代表者 |
上田 健治 (財)東京都精神医学総合研究所, 神経化学研究部門, 主任研究員 (90261180)
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研究分担者 |
額田 敏秀 (財)東京都精神医学総合研究所, 神経化学研究部門, 副参事研究員 (80189349)
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キーワード | NAC / NACP / アルツハイマー病 / パーキンソン病 / synuclein / 細胞内情報伝達 |
研究概要 |
我々は、アルツハイマー病(AD)脳アミロイドから未知ペプチドNAC(non-Aβ component of ADamyloid)を見出し、免疫電顕レベルでアミロイド繊維上に局在することを示し、前駆体蛋白質(NACP)のcDNAクローニングした。重視すべきは、NACPが最も発現している部位とAD脳の神経病理の分布部位とが酷似することである。一方、ADの特徴的神経病理である老人斑の数と痴呆の程度とは必ずしも一致しない。強く正相関するのがシナプス数の減少と痴呆の程度とである。NACPの局在が前シナプスという事実から、NACPの変異、機能異常、又は代謝異常がシナプスの変性を来し、そのことが直接痴呆という症状に繋がる可能性がある。実際、AD脳において、前シナプス当たりのNACP蛋白量が増大していること、そして老人斑の変性神経突起にもNACPが異常に蓄積していることを我々は見出した。 他方、驚くべきことに、97年6月、98年2月に、独立した5つの家族性パーキンソン病(PD)家系で、疾患原因遺伝子としてNACP遺伝子変異が相次いで同定された。そしてLewy小体の繊維構造上にNACPが存在することを我々は免疫電顕で示した(投稿中)。従って、NACPの変異が異常繊維構造形成を促進し、その異常構造物が細胞内、及び前シナプス部に蓄積し、そのことが生理機能に異常を(つまりは神経伝達異常を)もたらし、症状を発現せしめ、神経細胞死にも繋がる可能性が高い。従ってNACPの生理機能を知ることは、ADのみならずPDにおいても、それらの脳病理形成の分子病態生理を理解する上で重要な課題であり、本研究では、NACPの生理機能の解明を、細胞内情報伝達という局面に絞り、アフリカツメガエルの卵母細胞系を用いて機能解析しようとした。 我々はNACPのC末端近くのアミノ酸配列に、T細胞抗原受容体のCD3ξ鎖と相同性を見出した。CD3ξ鎖は、免疫グロブリンlgE受容体(FcεRl)のγ鎖と相同性があり、実際γ鎖の代わりにlgE受容体による細胞内情報伝達を代行する。lgE受容体はα・β・γ鎖から成り、γ鎖の代わりにNACPを卵母細胞に発現させ、細胞内Ca^<2+>濃度の上昇を、卵母細胞に内在するCa^<2+>活性性Cl^-電流を指標として電気生理学的に検討したところ、γ鎖の代わりにNACPで細胞内Ca^<2+>濃度の上昇が確認できた。現在さらに詳細な検討を行っている。
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