研究概要 |
1.σ-1受容体刺激の転写(制御)因子に及ぼす影響 18日令ラット胎児大脳より調整した初代培養神経細胞(無血清培養)をσ-1リガンドに曝露した後、核内蛋白質を抽出し、ゲルシフト法によりAP-1,AP-2,OCT-1,CREB等の発現を測定した。σ-1受容体アゴニスト、SA4503を1時間37度で細胞に処理した結果、核内CREB、NFkappaB、OCT-1、AP-1のコンセンサスオリゴヌクレオチドへの結合量は濃度依存性に低下した。このAP-1を構成するc-junやCREB、NFkappaBなどの転写因子はチロシン水酸化酵素(TH)及びドーパミンβ水酸化酵素(DBH)遺伝子の転写の維持・促進に関与している。そこで、次にSA4503のTH活性に及ぼす影響を検討した。 2.選択的σ-1リガンドのTHに及ぼす影響 17日令ラット胎児脳幹部より調整したカテコラミン含有細胞を含む初代培養細胞(調整初日のみ馬血清、牛胎児血清を含む培養液にて培養した後、無血清培養)を用いて、選択的σ-1リガンドに曝露した神経細胞のTH活性をin situ TH測定法により測定した。SA4503で3時間処理した細胞のin situTH活性は濃度依存性に低下していた。σ-1受容体を介したσ-1リガンドの作用機序を明らかにするうえで、THの発現を制御している蛋白質V-1に関する検討が必要である。そこで、今年度はV-1がTH及びDBH活性調節に関与する転写因子について検討した。V-1過剰発現細胞の核内リン酸化c-jun発現量を対照細胞と比較すると有意に増加していた。 以上の結果はσ-1リガンドは細胞内に取り込まれた後、CREB、NFkappaB、OCT-1、AP-1などの転写因子のDNA結合活性を低下させ、その下流にあるTH酵素発現に影響する機構が存在する可能性を示唆している。次年度はV-1とσ-1受容体によるTH支配機構の詳細な検討をおこなう。
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