研究概要 |
ガングリオシドGD1bは、ラット小脳初代培養中の顆粒細胞や神経様細胞へと分化誘導した細胞株に特異発現している。このGD1bの詳細な細胞内局在と生物学的機能について検討した。 1.電子顕微鏡によるガングリオシドの細胞内局在の解析. 免疫電子顕微鏡法にてGD1bを中心にガングリオシド抗原の局在を検討した。細胞はP19とPC12細胞株を用いた。その結果GD1bは分化誘導した両細胞株の細胞膜上に観察され、細胞体よりは神経突起に多く分布した。またその存在様式は細胞膜の外側にパッチ状に点在し、決して均一な分布を示さなかった。このことはGD1bが細胞膜上でクラスター、さらにはマイクロドメインを形成する事を示唆した。一方細胞質また他の細胞内小器官への明確な集積は認められなかった。他の抗体に関しては現在検討中である。 2.発現糖脂質の改変による生物学的機能変化:抗体添加による解析. (1)抗GD1b抗体(GGR12,IgG2b)による顆粒細胞の細胞応答 顆粒細胞を標的細胞として、100μg/mlの濃度まで抗GD1b抗体を培地に添加し観察したが、何れの調製時期、培養時期および濃度においても顆粒細胞への影響(細胞接着、細胞数、神経突起の伸展等)は認められなかった。また分化誘導させたP19細胞株(GD1b抗原陽性)でも同様であった。 (2)顆粒細胞およびPC12細胞株のアポトーシスに対する抗GD1b抗体の抑制効果 予備実験で、抗GD1b抗体の添加は顆粒細胞のアポトーシスを抑制する像を時に示したので、DNAの断片化等を指標に詳細に検討を重ねた。しかし顆粒細胞やPC12細胞株でその効果を明確に再現することはできなかった。これら結果は、少なくともガングリオシドGD1bの機能的役割が単なる抗体添加によるGD1b抗原との結合だけでは解析できないことを示唆した。
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