神経接着分子は神経系の形態形成とその維持という大変重要な役目がある。しかし、この分子が神経回路形成と可塑性を調節する上でどのように制御されているかは未だ解明されていない。最近、神経の可塑性に神経栄養因子の神経活動依存的調節機構が関与していることが示唆された。従って神経回路網形成および可塑性に、特異的神経インパルスのパターンと神経接着分子さらに神経成長因子の3者間の関与が重要であると考えられる。平成11年度はミエリン形成という重要な役割を持つオリゴデンドロサイトも神経回路網の形成等に大変重要な役割を担っている。その基礎過程で神経細胞やその軸索がどのようなシグナルを神経及びグリア細胞から受けて、更に別の細胞に送り、どのように正確に標的部位に達し神経回路網を形成するかという機構を理解する事は大変重要である。そこで、新たにオリゴデンドロサイトの分離培養法を開発して、その単離オリゴデンドロサイトを使用して初代神経細胞培養下でミエリンを形成させる事に成功した。更にミエリン形成時に神経軸索とオリゴデンドロサイトとの間でL1が関与している事が示唆された(未発表)。残念ながら、まだミエリン形成への神経インパルスの関与については明確な結果は得られていないが、本研究から神経回路形成において特異的神経インパルスのパターンと神経接着分子さらに神経成長因子の3者間の関与が大変重要である事が明らかとなった。
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