研究概要 |
低分子量ストレス蛋白質(sHsp)にはシャペロン様機能があると考えられているが、どのような分子と会合するのかについては全くわかっていなかった。我々はショウジョウバエsHspをbaitとしてTwo-hybrid systemを用い、特異的に相互作用する蛋白質としてショウジョウバエ胚のcDNAライブラリからユビキチン結合酵素のひとつであるUbc9を同定した。Ubc9は細胞内でRanGAP1など特定の蛋白質にユビキチン様蛋白質sentrin-1(別称SUMO-1,SMT3C)を結合させ、その蛋白質の細胞内局在に関与していると考えられている。今回我々は、これらの蛋白質の系がどのように働いているのかを理解するため、ヒトsentrin-1のRT-PCRcloningを行い、そのHis-tag融合蛋白質をウサギに免疫し、sentrin-1に対するアフィニティー精製抗体を作製した。この抗体で各種細胞抽出液のウェスタンブロットを行ったところ、monomerのsentrin-1と考えられる17kDaのバンドのほか、sentrin結合型蛋白質と思われるいくつかの主要なバンドが検出された。また、Senntrin-1の細胞内局在は免疫染色で主に核膜にあり、これまでに報告されているRanGAP1の局在に一致し、RanGAP1がsentrin化されて核膜孔のRanBP2と結合するという報告を支持した。ラット成獣の各種臓器の抽出液を用いたウェスタンブロットでは、膵臓に多量の抗sentrin抗体陽性のバンドが確認された。ラット胎仔の膵臓では腺房細胞の細胞質にsentrinの局在が免疫染色で観察された。そのほか筋組織、一部の小腸上皮細胞にも認められ、これらの組織においてsentrin修飾の系が働いていることが示唆された。一方、ヒトHsp27とsentrinとの相互作用についてはTwo-Hybrid法で陰性であり、Hsp27がsentrinの標的であると考えるより、むしろHsp27がUbc9の機能の制御に関わっているのではないかと推測された。
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