生物には概日性リズムという睡眠覚醒、ホルモン分泌などの行動や代謝を支配する約24時間周期のリズムが見られる。生物種固有の内在性の時計が、概日性リズムを支配し、明暗条件などの環境変化に対してリズム位相を徐々に同調することが知られている。 新規な相同遺伝子を検索する方法(IMS-PCR法)を考案し、ショウジョウバエの時計遺伝子period(per)のヒト及びマウスホモログを単離した。マウスのPeriod1(Per1)は、時計細胞のあるSCNで明暗及び恒暗条件下、ともに明期に高く暗期に低い転写日周リズムを有していた。また、SCNでのPer1の発現は、光パルス刺激により暗期でも極めて速やかに誘導された。これらの結果は、Per1の発現日周リズム及びその一過性誘導機構が、哺乳類の概日時計を構成する一要素であることを強く示唆している。そこで、Per1の転写日周振動機構を分子レベルで解析した。まず、ヒトPER1及びマウスPer1のプロモーター領域を含む全ゲノム構造、及びこれらの転写開始点を決定した。約5kbにわたる両遺伝子のプロモーター領域では、合計6つの良く保存された塩基配列が見い出された。次に、Per1プロモーターとluciferaseの融合遺伝子をリポーターとして用いた、NIH3T3細胞発現系を構築した。この系を用いて、Per1遺伝子の転写因子であるClockとBmal1分子による転写誘導に必要な配列を決定した。最近、我々はショウジョウバエの別の時計遺伝子timeless(tim)の哺乳類ホモログであるTimeless(Tim)を単離することに成功した。Timに明確な転写日周リズムは見られなかったが、Tim分子はPer1分子と協同的にPer1の自律的な発現抑制に機能することが判明した。
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