ストレス条件下における脳内神経ステロイド合成酵素の変動とその生理的意義

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 09680794
• 研究種目: 基盤研究(C)
• 研究機関: 徳島大学
• 研究代表者: 鶴尾 吉宏 徳島大学, 医学部, 助教授 (90207449)
• 研究分担者: 森田 恭二 徳島大学, 医学部, 助教授 (50108883)
• キーワード: 5α-リダクターゼ / 神経ステロイド / ストレス / ラット / 脳 / 免疫組織化学

研究概要

5α-リダクターゼは、3位にケト基、4-5位間に二重結合を持ったステロイドの5α位を還元する酵素である。二つあるisozymeの内、脳には1型の酵素が存在する。中枢神経の発達、分化ならびに精神活動に影響を与えるステロイドホルモンとストレスとの関係を調べるために、ラットC6グリオーマ細胞を、in vitroでの実験モデル系に用いて、1型酵素に対する抗体を使って実験を行った。C6グリオーマ細胞を無血清培地という一種のストレス条件下で培養して、この細胞に見られた5α-リダクターゼなどの表現形の発現ならびに形態の変化を免疫組織化学的に調べた。5α-リダクターゼの発現は、血清培地の培養ではグリオーマ細胞の核周囲部位に限局したのに対し、無血清培地の培養では核周囲部位から細胞質領域に拡がった。しかし、アストロサイトのマーカーであるGFAPや、オリゴデンドロサイトのマーカーであるCNPaseの細胞質内での発現は影響されなかった。無血清培地で見られた5α-リダクターゼの発現の変化は可逆的であり、血清培地に戻すと反応は核周囲部位に認められた。この変化は培地に含まれる生物学的に活性を持つ小分子よりも血清タンパクによって起こる。また、グリオーマ細胞は、血清培地では紡錘形であるのに対し、無血清培地では突起を伸長して移極性となり肥大化した。以上から、無血清培地という一種のストレス状態で培養することによって、C6グリオーマ細胞はその表現形を変えることなく5α-リダクターゼの細胞内局在を変化させた。また、ストレス反応に関与する副腎において5α-リダクターゼの局在を調べた。酵素は、皮質の束状層から網状層にかけて存在した。免疫反応は、性腺摘除で増強し、テストステロン、エストラジオールの補充によって減弱した。髄質の支持細胞とシュワン細胞にも陽性反応が見られたが、これらはステロイドホルモンによって変化しなかった。

研究成果

• [文献書誌] Tamura M: "Localization of NADPH diaphorase and vasoactive intestinal polypeptide-containing neurons in the efferent pathway to the rat corpus cavernosum" Eur.Urol.32. 100-104 (1997)
• [文献書誌] Yokoi H: "Steroid 5α-reductase type 1 immunolocalized in the adrenal gland of normal,gonadec tomized,and Sex hormone-supplemented rats" Histochem.Cell.Biol.109(2). 127-134 (1998)
• [文献書誌] Tsuruo Y: "Influence of serum-free conditions on Subcellulur localization of steroid 5α-reductase in rat C6 glioma cells" Brain Res. (発表予定). (1998)
• [文献書誌] Sakurai Y: "Differentiation of oligodendrocyte occurs in contact with astrocyte" J.Neurosci.Res. (発表予定). (1998)
• [文献書誌] Yokoi H: "Light and electron microscopic immunocytochemistry on the loculization of 17α-hydroxylase/C17,20-lyase(P450c17)in the rat placenta" J.Med.Invest.(発表予定). (1998)
• [文献書誌] Yokoi H: "Steroid 5α-reductase in supporting cells and Schwann cells of the rat adrenal medulla:light and electron microscopic study." Anat.Rec.(発表予定). (1998)