本研究は日本ウズラの鳴き行動がホルモンの神経核への作用によって変わることから、鳴き行動発現にかかわる脳内における発声中枢神経の機構を解明することを目的とする。本研究は平成9年、10年度の2年間に行われ、以下に記載する研究成果を得た。 1. ニホンウズラのディストレス・コール(distress call)(幼鳥雌雄ともに群から一羽を分離すると発声する鳴き声)の運動系の発声中枢神経核はICO核であることが明らかにできた。 2. ディストレスコールを指標にして、幼鳥の雌雄の皮下及び脳内にテストステロンを投与すると、これら幼鳥の鳴きはディストレスコールからチック・クローイング(chick crowing)に代わった。 1) テストステロン以外のホルモン投与は鳴きの行動を変化させなかった。 2) 鳴きの行動はテストステロンの濃度の変化に依存していた。3) 脳内へのテストステロンの作用は、これまでに細胞への反応として考えられていたホルモン作用では説明できない、きわめて早い時間の反応であった。4) 成鳥雌ではICO核を電気刺激しただけではクロー(crowing)の鳴き声を発声しなかった。しかし、テストステロンを作用させるとクローンを発声した。 3. ICO核ニューロンについてテストステロンに対する受容体について生化学的に調べた。テストステロン受容体タンパク質の存在はnon-genomic actionであることを示唆した。
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