研究概要 |
3種類のGnRH遺伝子の脳内発現に対するエストロゲン(EB)、甲状腺ホルモン(T3)および11ケトテストステロン(KT)の影響を未成熟雄性テラピア(Tilapia;Oreochromis niloticus)において調べた。去勢したテラピアに対し、術後14日目より5μg/g体重の以上のステロイド、又は溶媒(sesame oil)を腹腔内に投与した。パラフィン包埋による脳切片の作成後、salmon-,seabream-およびchicken II-GnRH遺伝子の第二エクソンに相補的なアンチセンス合成オリゴヌクレオチドを用いてin situ hybridizationを行った。プローブは3'末端を^<35>S-dATPで標識し、エマルジョンオートラジオグラフィーの後、画像解析装置を用いて、終神経上のGnRHニューロン群の全体積および全salmon-GnRH mRNA量を、また視索前野と中脳のGnRHニューロンに関しては細胞単位でのGnRH mRNA量をステロイド投与群と対照群との差を解析した。KTはどのGnRHニューロン群においても全く効果を示さなかった。中脳のchicken II-GnRH mRNA量、細胞数、細胞表面積にはEB,T3,KTによる有意な変化は起きなかった。しかしT3処置によって終神経上のsalmon-GnRH mRNA量は有意に減少し、EB処置により視索前野のseabream-GnRHニューロンの数は有意に増加した。以上のことからT3は終神経上のsalmon-GnRH mRNAの発現を抑制することにより成熟を制御していることが考えられた。また視索前野のseabream-GnRHニューロンの制御機構には芳香化を受けないアンドロゲンであるKTによる作用はなく、EBによる効果が認められたことにより、成熟、生殖行動に関わる視索前野のseabream-GnRHニューロンへのEBを介した経路が重要であることが明らかとなった。
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