哺乳類の大脳皮質は運動野、視覚野、聴覚野等の機能的な領野に分かれており、各々の領野は特徴的な細胞構築、神経細胞間結合を有している。高等な哺乳類では更に高次の連合野がよく発達している。中でももっとも端的な例としてヒトの言語野を挙げることができる。これらの領野が個体発生過程でどのように分化するか、また新しい高次の領野が進化の過程でどのように獲得されたのかは不明である。各領野は異なった細胞構築、機能をもつにも関わらず、生化学的に区別しうる特異的分子はほとんど報告されていない。そこで第一段階として旧世界ザル、ヒトの運動野ならびに視覚野、言語野等の連合野で特異的に発現しているマーカーとなる遺伝子をサブトラクション法、SAGE法等によって単離することを目的とした。 旧世界ザル(カニクイザル)の脳の一次運動野、一次視覚野等の領野からRNAを調製し、領野別cDNAを合成した。領野特異的cDNAを選別するために。一次運動野と一次視覚野cDNAライブラリ二間のサブトラクションを試みた。方法はDiachenko et al.(1996)PNAS 93:6025-6030によって開発されたSuppression Subtractive Hybridization(SSH)法を用いた。いくつかの条件検討のための予備実験は成功していてるにも関わらずどちらかの領野に特異的に発現しているcDNAは未だに得られていない。
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