研究概要 |
平成10年度は、平成9年度に引き続き、以下に記載した研究実施計画に基づき、2頭目,3頭目のサルにおいて、実施計画の(1)三次元眼球運動記録校正のためのトレーニング、(2)全身麻酔下の無菌手術、(3)移植された強膜サーチコイルの校正、(4)滑車神経、外転神経への微小電気刺激の遂行、(5)回転ベクトル表記に基づいた解析、(6)単一神経細胞記録と三次元眼球運動記録の遂行を行った.滑車神経の微小刺激実験のデータ解析は,ほぼ終了し,現在、刺激,記録部位の組織学的同定と単一神経細胞記録結果の回転ベクトル表記に基づいた解析および微少電気刺激結果との比較検討)を進めている. 3頭のサルで合計12箇所で滑車神経の微少電気刺激を行った.電気刺激は,持続時間250μs,刺激頻度500Hzの陰性矩形波を2秒間隔で与えた.そのパラメータは,刺激強度10〜50μA、刺激時間25〜200msであった. 電気刺激により,5-8ミリ秒の短潜時で解剖学的に報告されている上斜筋の作用方向と定性的には一致する眼球運動(内旋、下転、外転)が誘発された。その誘発眼球運動の持続時間は、電気刺激の持続時間に一致しており、三次元眼位のいずれの成分も電気刺激終了後、開始時とほぼ同一の潜時を持って指数関数的に刺激前の眼位へ復帰する傾向が見られた。誘発眼球運動を一回の回転として表したときの平均の回転軸の方向は、電気刺激の強度、持続時間には影響されないこと、また、上斜筋の主たる作用平面である回旋-垂直平面では,眼球運動誘発時の水平眼位とは相関しないことが明らかとなった.この結果は,上斜筋の作用方向が眼球に対してではなく眼窩に対して固定されていることを示唆しており,これまで上下直筋、内外直筋で報告されている軟性滑車(Soft pulley)が、上斜筋では,有効には作用していないと考えられる.
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