大脳皮質には、サッカード制御に関連する領野が複数あり、中でも前頭眼野FEF、補足眼野SEF、頭頂葉LIP野がよく知られている。しかしこの三者の機能的差異は不明な点が多い。サッカードに関わる三領野の差を調べる目的で、固視課題、遅延サッカード課題、上肢到達課題をサルに訓練した。さらに其の課題遂行中に各部位を細胞活動記録用電極を使って皮質内微小刺激を行った。刺激効果に関して、LIPとFEFに関して、興味深い差が見られた。刺激誘発のサッカードは、基準となる点があり、そこからのベクトルとして表現されるが、随意的サッカードの前後では、其の基準点が元の固視点から新しい固視点に更新される。これは、FEF、LIP両方で見られたが、其のタイミングに差が見られた。すなわち、LIPはFEFに比較して、基準点のアップデートが早く行われた。この事は、視覚応答に関して、受容野がサッカ-ドに先行して移動するとする以前に報告と共に考えると、受容野の場合も、誘発サッカ-ドの場合も、其の基準点がどこに位置しているかは、課題の中でダイナミックに調節されている事が明らかになった。このような基準点座標におけるサッカ-ド制御機構は、従来知られた、固定ベクトルやゴ-ル収斂型サッカードの表現と違い、オブジェクト内連続サッカード運動課題中において、重要な機能的意義がある事が示唆された。
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