研究課題
基盤研究(C)
申請者等のこれまでの研究によれば、N-Methyl-D-aspartate(NMDA)やセロトニンの灌流投与によって胎生15.5日(出生7日前)以後の脊髄摘出標本の前根に安定したリズムが誘発されること、同一脊髄節の左右の前根記録の発射が初期(胎生15.5〜16.5日)には同期しているが発達に伴い交代性に変化することが明らかになっており、またこの変化に抑制路の発達が関与していることが示唆されている。平成9年度はこれらの先行研究を基盤に、歩行運動のもう一つの特徴である伸筋と屈筋の交代性運動を発現させる脊髄神経機構の機能分化様式についての研究した。(1)薬物投与によって初めてリズム運動が誘発される胎生14.5日から成熟動物と同様に左右前根に交代性リズムが出現する胎生20.5日以降のラット胎児及び生後3日までの新生ラットを用いて実験を行った。各日齢のラット脊髄摘出標本を作製し、歩行様リズム運動は、最も安定したリズムを誘発するNMDAとセロトニンの混合溶液の投与によって発現させた。(2)新生ラットにおける脊髄摘出標本あるいは脊髄・後肢摘出標本を用いた実験から第2腰髄前根のリズム活動は歩行運動の屈筋相を、第5腰髄前根の活動は主として伸筋相の活動を代表していることを明らかにした。直接の筋活動の記録が困難な胎児において、屈筋と伸筋へのリズム発生神経機構の分化について第2腰髄前根と第5腰髄前根の記録を行い解析した。その結果、左右の交代性リズムを形成する神経回路は胎生18.5日までに分化するが、伸筋・屈筋の交代性リズムを形成する回路はそれより1〜2日遅れて分化することが明らかになった。(3)薬理学的実験から左右及び伸筋・屈筋の交代性リズムを形成する機構の形成には、いずれもグリシン性の抑制路の発達が深く関与していることが明らかになった。
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