グラヤノトキシンおよびその関連毒はNaチャネルの開放をおこす生物毒として知られている。まず、グラヤノトキシンおよびその類同体のうちgrayanotoxin I(GTX-I)とα-dihydro-grayanotoxin II(α-dihydro-GTX-II)のカエル心室筋Naチャネル及び後根神経節細胞(DRG)に存在するフグ毒感受性(TTX-s)、フグ毒非感受性(TTX-i)Naチャネルに対する作用について調べた。ホールセル電流記録の結果では、どちらのCTXも脱分極刺激を繰り返し与える事によりNaチャネルを修飾する事がわかった。DRG TTX-i Naチャネルが両GTXに感受性がもっとも高く、300μM GTX存在下でコントロールの35%程度のコンダクタンスを持ち低い膜電位より活性化されるゆっくりとしたNa電流が観察された。一方、心筋性Naチャンネルに対しα-dihydro-GTX-IIによる修飾では著しく小さな修飾電流しか観察できなかった。単一チャネル電流記録の結果では修飾を受けたチャネルはDRG TTX-i Naチャネルも心筋性Naチャンネルも両GTXに対して同じ様なコンダクタンスや開口確率を示した。この事はホールセル電流記録における両チャネルのGTXに対する作用の差は修飾を受けているチャネルの割合の大小で説明されることを意味する。また、哺乳類培養細胞(HEK)に発現させたラット脳および心臓のNaチャネルについても同様の実験を進め、カエルの場合と同様に繰り返し脱分極パルスにより修飾が引き起こされる事を観察している。カエルおよびラットのNaチャネルでは共に単一の持続パルスでは十分な修飾は得られておらず、α-dihydro-GTX-IIの修飾作用がイカ巨大神経Naチャネルにおいては単一の持続パルスにより引き起こされるのとは対照的であり、感受性と共に修飾様式においてもCTXによりチャネルを分類できる可能性が示された。
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