研究概要 |
我々は、睡眠・覚醒を繰り返す無麻酔動物で脳幹のコリン作動性ニューロンの活動を記録して、REM睡眠の導入維持にこのニューロンが重要な役割を果たしていることを示した世界で3つしかない研究グループの1つであり、その中でもコリン作動性ニューロンとノルアドレナリン作動性ニューロンが混在していないラットで記録する技術を持った世界でただ1つのグループである。そのコリン作動性ニューロンはスパイクの幅が他のニューロンよりも広いことで識別できることをさまざまな根拠から示してきたが、上記の他の追随を許さない技術を持つことに対する怨嗟を持つとしか思えない人達が少数いて、その人達はそのスパイク幅によるコリン作動性ニューロンの同定を認めようとしなかった。そこで私達は今回の研究課題のうちの神経機構についての基礎を固めるために、単一ニューロン活動を記録したニューロンを電極内に入れたneurobiotinでマークし、そのneurobiotinを発色させた標本をNADPH-diaphorase組織化学法で二重染色して、幅の広いスパイクを発する外背側被蓋核ニューロンはコリン作動性であり、幅の狭いスパイクのニューロンは非コリン作動性であることをみごとに示すことができた(Neuroscience,1998)。 この一方で、液性機序に関する研究の方は大きな壁にぶつかって、方法論からの検討をせまられている。すなわち、当初の計画では考えうる液性因子(prolactin等)を第4脳室に挿入したカテーテルを通して注入することにしていたが、何匹ものラットでの予備実験で、第4脳室に確実に効率よくカテーテルを挿入することはほぼ不可能ということがわかった。そのため、多連電極を用いて空気圧による射出を行うべく、そのための機械を手配してセットしているところである。この研究は2年目に待たざるを得ない。
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