ラットを用い、脊髄後角表層の組織からRNAを抽出し、PhotometryによってRNA溶液の濃度を測定した。抽出したRNA溶液の希釈列を作り、逆転写(RT)反応によってcDNAを合成した。遺伝子増幅(PCR)法によって増幅した後、アガロースゲル電気泳動によってcDNAを検出した。RNA溶液の希釈列の検討によって、一つのニューロンに含まれると考えられる1pg以下のオーダーのmRNAから、エンケファリン(Enk)のmRNAを検出できることを確認した。また、全てのニューロンに普遍的に発現していると考えられる代謝酵素であるG3-PDHのプライマーを作成した。これらのmRNAも十分な感度で検出することができた。 次に、脊髄後角ニューロンを単離し培養した。この培養維持したニューロンから、形態などから後角表層ニューロンと考えられるニューロンを選択しパッチクランプ・ホールセル記録を行なった。その後、そのニューロンから細胞質を採取し、RT-PCR法によってEnk、G3-PDHのmRNAの同定を試みた。ほぼ全例でG3-PDHのmRNAが検出された。また、約8%のニューロンにEnkのmRNAが検出された。このEnk含有ニューロンの膜容量、膜抵抗およびK電流の性質を検討したが、Enk非含有ニューロンと比べて特異な差異は現在のところ見いだされなかった。 今後、さらに、Enkのプライマーの設計に改良を加えて、感度の増強を試み、パッチクランプ・単一細胞RT-PCR法によるEnk含有ニューロン同定方法の確立を目指したい。
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