(1)シンタキシンの抑制的相互作用部位の探索:シナプス前膜蛋白質シンタキシンは活性ゾーンにおいてシナプス小胞をCaチャネル近傍にドックさせるのに中心的な働きをしておりシナプス開口放出に必須と考えられている。一方、Ca流入が生じるまでは開口放出は抑制されている。「シンタキシン分子内に開口放出促進ドメインと抑制ドメインがある」という仮説を検証するために、シンタキシンの部分合成ペプチドをホールセルパッチピペットを用いて細胞内に投与し、興奮性シナプス電流振幅に及ぼす効果を検討した。培養海馬神経細胞において孤立神経細胞の形成する自己回帰性シナプス(オ-タプス)に20アミノ酸残基からなる数種類の部分合成ペプチドを適用したところ、N末端側の部分ペプチドにより開口放出の増大が見られた。開口放出抑制ドメインの部位についてさらに詳細な検討をしている。 (2)オ-タプス開口放出の長期増強:海馬CA3領域における苔状線維末端部はcyclic AMPを介してシナプス前性の長期増強を示す。歯状回顆粒細胞を培養しオ-タプスを作らせcAMPによる開口放出の増強をホールセルクランプ法により検討した。Forskolin投与によりcAMP濃度を上昇させると興奮性シナプス電流(epsc)振幅が増大した。このepsc振幅の増大はシナプス前末端部からの開口放出の増加であることがペアドパルス解析法から示唆された。非同期型epsc振幅分布の分析結果もこれを支持した。外液Ca濃度を0.5から4mMに増加させるとepsc振幅、ペアドパルス振幅比は対応して変化した。これらの関係から定量モデルを作り放出確率を推定した。Forskolinによるepsc増強をペアドパルス法により解析したところ放出確率の上昇が生じていることが強く示唆された。詳細な分子機構について検討を続けている。
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