研究概要 |
目的:グリア細胞Na, K-pump機能を調べ、虚血時における働きについて検索する。 方法:新生ウイスターラットの大脳皮質より単離したアストロサイトを培養し、ニスタチン穿孔パッチクランプ法を用いてNa,K-pump電流(Ip)を測定した。 結果:1.Ipは細胞外K濃度依存性に活性化され、Kd値は0.8mM、Hill係数は1.7であった。2.ouabainは濃度依存性にIpを抑制し、IC50は約0.1mMで、ouabain低感受性のアイソフォームの存在が示唆された。3.Ipは脱分極側で大きく、過分極側で小さくなるS字状の電流―電圧特性を示した。4.細胞内Na非存在下においても細胞外K添加によってIpは発生したが、細胞外Na除去によってIpは消失した。この結果は、アストロサイトにはテトロドトキシン非感受性の非不活化型Na流電流があり、これがIp活性に寄与していることを示唆した。細胞内Na存在下に細胞外Naを除去すると全ての膜電位においてIpの増大が認められ、特に過分極側における増大が著しかった。5.虚血類似負荷はIpに影響を与えず、虚血中でもアストロサイトのIp活性は保たれていた。6.グルタミン酸は細胞内Na濃度を増やすことによりIp活性を増強させた。また、増強効果はグルタミン酸除去後にも持続する場合があり、代謝型グルタミン酸受容体を介するNa,K-ATPaseのリン酸化がこれに関わっている可能性が考えられた。 まとめ:虚血中でもアストロサイトのNa,K-pumpは機能しており、細胞外Kやグルタミン酸の蓄積、ならびに細胞外Naの減少によりその活性は最大に達していると考えられた。このことはアストロサイトが虚血中に増加している細胞外Kを積極的に除去し、神経細胞保護的に働いていることを示唆する。
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