FISH法を用いて、ヒト及びマウス・ラットのcDNAクローンを、未だ十分な染色体地図が作製されていないシリアンハムスター、チャイニーズハムスター、スンクス(Suncus murinus)の染色体上に直接マッピングすることによって、機能遺伝子の染色体地図を作製すると共に、ヒト、マウス染色体との相同領域の同定を試みた。本研究において、65個の機能遺伝子cDNAクローンをシリアンハムスターの常染色体上にマップした結果、両種間に26の染色体相同領域が、36個のcDNAクローンをチャイニーズハムスター常染色体上にマップした結果、シリアンハムスターとチャイニーズハムスター常染色体間に13の染色体相同領域がそれぞれ検出された。 FISH法を用いて、ヒトX染色体上での位置が判明している26個のヒト機能遺伝子のマウス及びラットホモローグのcDNAクローンを、マウス、ラット、シリアンハムスター、チャイニーズハムスター、インドトゲネズミ(Mus platythrix、2n=26)、スンクスのX染色体上にマッピングし、それらの遺伝子オーダーを比較した。その結果、ヒトのX染色体長腕全域とラットのX染色体長腕のq21.1からq37.2(テロメア)の領域は、遺伝子オーダーが同じであり、また、インドトゲネズミ、シリアンハムスター及びチャイニーズハムスターX染色体における遺伝子オーダーもラットのオーダーと類似していたことから、ラットのX染色体は齧歯類の祖先型に近いと予想された。マウスとラットのX染色体間には、進化過程において少なくとも4回の逆位が生じていることが推定され、マウスの遺伝子オーダーは他の動物種とも顕著に異なった。ヒトとスンクスのX染色体間で遺伝子オーダーを比較したところ、遺伝子オーダーに大きな違いがみられ、両X染色体間には、進化過程において少なくとも4回の逆位が生じていることが推定された。
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