研究概要 |
わが国で当施設で始めて分離されたモルモットパラインフルエンザ3型ウイルス(GPIV3)のゲノムに関して今年度も引き続き遺伝子解析を行った。その結果、GPIV3と他のPIV3を比較するとWA株と3.8%-6.5%、JS株とは2.1%-4.4%、BPIV3とは20.4%-29.0%の相違がやはりみられ、GPIV3はBPIV3よりもHPIV3に近縁のウイルスであることがより強く示唆された。NJ法およびUPGMA法を用いたGPIV3、HPIV3(WA株、JS株、JScp12,45変異株)およびBPIV3間の分子系統樹作成を行ったところ、遺伝的距離の点でGPIV3はBPIV3からは遠く離れており、HPIV3の範疇にあること、さらに、WA株とJS株とのおおむね中間に位置し、相対的にWA株よりはJS株に近縁ウイルスであることが今回も証明された。 これらを考察すると、GPIV3はモルモット固有のウイルスというよりは、ヒトPIV3(HPIV3)新たな仔モルモットの産出をみるモルモット生産コロニーに侵入し、それが幾世代にも維持されてきたものと考える方がより無理がない。一方、各タンパクの各種活性部位のアミノ酸配列の類似性から、モルモットのGPIV3感染をヒトにも感染しうる人獣共通感染症と捉えることができる。この研究は、動物飼育施設におけるパラインフルエンザ3型ウイルスのヒトからモルモットへ、モルモットからヒトへという相互の二方向性感染について警鐘を鳴らすものであり、モルモット生産業者への啓蒙を今後必要とする。
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