実験動物領域における抗生物質と消毒薬耐性緑膿菌の出現と意義を検討するために、各種動物を初めとして広く実験動物領域から緑膿菌を分離、分離菌の血清群の分類、抗生物質と消毒薬の耐性菌の検索を行った。 1)分離:マウス等の動物糞便から132株、動物の飼育環境から42株、動物飼育者の手袋から9株分離され、血清群はI及びG群が比較的高かった。2)抗生物質:人医領域で耐性菌の出現が確認されているピペラシリン、ゲンタマインシン、セフォペラゾン、イミペネム、及び自然耐性をもつクロラムフェニコール、セファキシチン、テトラサイクリンを検討した結果、前四者ではマウス糞便由来の1株がイミペネムに中等度耐性を示しただけで耐性株はほとんど出現しておらず、後三者ではほとんどすべての株が耐性を獲得していた。3)消毒薬:緑膿菌が自然耐性を持つとされている塩化ベンゼトニウム、使用頻度の高いグルコン酸クロルヘキシジンとアルキルジアミノエチルグリシンを検討した結果、前一者では大部分の株が常用使用濃度に耐性を獲得しており、後二者では全株が感受性株であった。4)染色体DNAのゲノム型分類:G群の血清群の緑膿菌を対象にして、マウス糞便由来の10株、マウス飼育管理者由来の2株、マウス飼育環境由来の10株を検討した結果、マウス糞便由来株は3つの泳動パターンに、ヒト由来株とマウス飼育環境由来株もマウス糞便由来株が示したうちの2つと同じ泳動パターンを示した。 以上から、実験動物領域における緑膿菌汚染は隣接する病院等の人医領域とは無関係に起きており、抗生物質耐性菌はほとんど出現しておらず、動物が汚染源となって動物センター内部の環境及び飼育管理者等に伝播していると考えられた。消毒薬については自然耐性のみを考慮すればよく、これまでの使用方法に問題はないと考えられた。
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