研究概要 |
不快感尺度として用いるカプサイシン(CAP)血管痛モデルにおける情動系を介した自律神経系に与える影響を観察する目的でCAPの投与用量を変化させた場合の心拍数の変化について観察したところ、投与前と比較して用量に依存して増加傾向にあることが確認された。しかしながら、意識下動物でのP波の長時間の安定した検出がかなり難しい事が判明し、ゆらぎ特性を十分観察するには至らなかった。今後は、安定したP波の導出法を再検討して新たに開発する必要がある。一方、CAP血管痛モデルの本質の一端を探る目的で、近年特に注目されている一次知覚神経系の候補伝達物質としてのサブスタンスP(SP)、ニューロキニンA(NKA)および興奮性アミノ酸(EAAs)の本モデルへの関与について行動学的に検討を加えた。その結果、脊髄腔内へ上記3者の特異的拮抗薬(SP→CP-96,345とFK888.NKA→MEN10,376とFK224.EAAs→MK-801)を処理するとCAP誘発の血管痛に対してNKAおよびEAAsの両拮抗薬が著明な抑制効果を示したが、SPの拮抗薬はほとんど影響を与えなかった。さらにSP,NKAおよびEAAsを同一経路で動物の脊髄腔内へ与えてみると、SPを除いてCAP誘発の血管痛を増強する結果が得られた。また、NKAの増強反応はNKAの拮抗薬でのみ遮断された。これら一連の結果は、本モデルの発現もしくは伝達過程における内因性神経性物質として、NKAおよびEAAsが重要な役割を演じていることが示唆された。来年度は上記の観察結果を基に心拍数のゆらぎ特性との関連を中心に検討して行きたい。
|